「老後資金はいくら必要なのだろう?」
そう考えて調べても、2,000万円、3,000万円など、人によって必要額が違うため、自分の答えはなかなか見つかりません。
老後資金の不足額は、平均額だけでは判断できません。自分の生活費、年金などの収入、計算する期間、まとまった支出、老後に使える資産の5つを確認する必要があります。
私も55歳の会社員ですが、本人の年金見込額、再雇用後の給料、退職金はまだ確認できていません。住宅ローンは72歳まで残る予定で、同居する大学生2人の教育費もあります。
そのため、今すぐ正確な不足額を出せる状態ではありません。しかし、未確認の数字を空欄にしておけば、何を調べればよいかが分かります。
この記事では、老後資金の不足額を5つの数字で見える化する方法を説明します。最初から完璧な計算を目指さず、確認できる数字から書き出してみましょう。
結論|老後資金の不足額は5つの数字で計算する
老後資金の不足額を確認するために必要なのは、次の5つです。
| 順番 | 確認する数字 | 内容 |
| 1 | 老後の月額生活費 | 退職後に毎月いくら必要か |
| 2 | 老後の月額収入 | 再雇用の給料や年金が毎月いくら入るか |
| 3 | 不足が続く期間 | 何歳から何歳まで計算するか |
| 4 | まとまった支出 | 住宅修繕、車、医療・介護など |
| 5 | 老後に使える資産 | 預貯金、退職金、企業型DCなど |
基本の計算式は次のとおりです。
毎月の不足額=老後の月額生活費-老後の月額収入
生活費の不足総額=毎月の不足額×12か月×不足が続く年数
老後資金の不足額=生活費の不足総額+まとまった支出-老後に使える資産
ただし、60歳から65歳まで働く場合と、65歳以降に年金で生活する場合では収入が変わります。
そのため、実際には期間を分けて計算することが大切です。

1.老後の月額生活費を確認する
最初に確認するのは、現在の月額生活費です。
老後の生活費をいきなり予想するのではなく、通帳、カード明細、家計簿などから、現在いくら使っているかを確認します。
主な支出は次のとおりです。
- 住居費
- 食費
- 水道光熱費
- 通信費
- 保険料
- 車関連費
- 日用品費
- 医療費
- 税金・社会保険料
- 趣味・交際費
さらに、退職後の変化によって3つに分けます。
| 分け方 | 具体例 |
| 減る可能性がある支出 | 通勤費、昼食代、仕事用の衣服代 |
| 退職後も残る支出 | 食費、光熱費、通信費、住宅ローン |
| 増える可能性がある支出 | 医療費、趣味、在宅時間の増加に伴う光熱費 |
住宅修繕や車の買い替えなど、毎月発生しない支出は月額生活費へ入れず、後ほど「まとまった支出」として計算します。
- 現在の月額生活費を確認した
- 退職後に減る支出と残る支出を分けた
- 年払いと臨時支出を月額から外した
この段階では、正確な金額でなくても構いません。まずは「月25万円」など、年金と比較できる金額を仮置きします。
2.老後の月額収入を確認する
次に、退職後に入るお金を確認します。
老後の収入は、公的年金だけとは限りません。
- 再雇用後の給料
- 公的年金
- 企業年金
- 個人年金
- 配偶者の収入
- その他の継続的な収入
再雇用後の給料と年金では、受け取る時期が異なります。そのため、すべてを一つの月額にまとめず、期間ごとに分けます。
| 期間 | 主な収入 |
| 定年から年金受給開始まで | 再雇用の給料、貯蓄の取り崩しなど |
| 年金受給開始後 | 公的年金、企業年金など |
| 完全退職後 | 年金など継続する収入 |
公的年金は、ねんきん定期便またはねんきんネットで確認します。
ねんきんネットでは、現在の加入条件が60歳まで続くと仮定した「かんたん試算」のほか、今後の働き方や受給開始年齢を設定した試算もできます。ただし、表示される金額は将来の確定額ではありません。
また、年金の見込額は原則として額面です。税金や社会保険料を差し引いた手取り額とは異なるため、生活費と比べる際は注意が必要です。
- 再雇用後の給料を確認した
- 年金見込額の年額を確認した
- 年額を12で割って月額を出した
- 本人分と配偶者分を分けた
未確認の収入を平均額で埋める必要はありません。「人事へ確認」「ねんきんネットで試算」と記録しておきます。
3.不足が続く期間を分ける
毎月の不足額が分かっても、期間を決めなければ不足総額は計算できません。
ただし、「65歳から90歳まで」のように一つの期間だけで計算すると、収入や支出の変化を反映できないことがあります。
50代会社員の場合は、次のように分けると整理しやすくなります。
| 期間 | 確認すること |
| 現在から60歳まで | 教育費、住宅ローン、貯蓄できる金額 |
| 60歳から65歳まで | 再雇用後の収入と生活費 |
| 65歳から住宅ローン完済まで | 年金収入とローン返済を含む生活費 |
| 住宅ローン完済後 | 住居費が変わった後の生活費 |
私の場合は住宅ローンが72歳まで残る予定なので、65歳から先も「完済前」と「完済後」に分ける必要があります。
計算の終了年齢に全員共通の正解はありません。まず90歳まで計算し、必要に応じて95歳までのケースも確認する方法があります。
これは寿命を予測するためではありません。生活期間が延びた場合に、必要額がどの程度変わるかを見るためです。
- 定年予定年齢を確認した
- 年金の受給開始年齢を確認した
- 住宅ローンなど大きな支出が終わる年齢を確認した
- 90歳と95歳など複数の期間で計算した
4.まとまった支出を月額生活費と分ける
老後には、毎月の生活費とは別に、まとまった支出が発生することがあります。
例えば次のような支出です。
- 住宅の修繕
- 給湯器やエアコンなどの交換
- 車の買い替え
- 医療・介護に備える費用
- 冠婚葬祭
- 子どもへの援助
- 旅行や趣味
- 引っ越しや住み替え
これらを毎月の生活費へ入れると、何にいくら必要なのか分かりにくくなります。
次のような表に分けて書きます。
| まとまった支出 | 予定時期 | 仮の金額 | 確認資料 |
| 住宅修繕 | 70歳ごろ | 未確認 | 修繕箇所、見積書 |
| 車の買い替え | 65歳ごろ | 未確認 | 現在の車の使用予定 |
| 医療・介護への備え | 未定 | 未確認 | 公的制度、家計の余力 |
| 旅行・趣味 | 毎年または数年ごと | 未確認 | 希望する回数と予算 |
金額が分からない項目は、無理に平均値で埋めません。
「予定あり・金額未確認」と書くだけでも、計算から漏れることを防げます。
- 月額生活費と臨時支出を分けた
- 支出が発生する時期を書いた
- 金額が不明な項目を空欄のまま放置していない
5.老後に使える資産を確認する
最後に、老後の生活へ使える資産を確認します。
- 預貯金
- 退職金
- 企業年金
- 企業型DC
- 新NISAなどの運用資産
- 保険の満期金や解約返戻金
- その他の老後用資産
ただし、口座残高や資産残高の合計を、そのまま老後資金として使うことはできません。
教育費、生活予備費、住宅修繕費など、すでに使い道が決まっているお金を除く必要があります。
老後に使える資産=保有資産の合計-老後以外に使う予定のお金
例えば、預貯金が1,000万円あっても、そのうち300万円を教育費、200万円を生活予備費として確保するなら、老後資金として数えるのは500万円です。
| 資産 | 現在残高 | 使える時期 | 老後資金に含める金額 |
| 普通預金・定期預金 | すぐ使える | ||
| 退職金 | 退職時 | ||
| 企業型DC | 受取可能時期を確認 | ||
| 証券口座 | 売却時 | ||
| 生活予備費 | 緊急時 | 老後資金とは分ける | |
| 教育費用の資金 | 卒業まで | 老後資金には含めない |
退職金の見込額が分からない場合は、勤務先の退職金規程や社内資料を確認し、必要に応じて人事へ問い合わせます。
- 預貯金と運用資産を一覧にした
- 教育費や生活予備費を分けた
- 退職金の見込額と受取時期を確認した
- 企業型DCなどの受取条件を確認した
<!– 内部リンク候補:記事027「退職金の使い道」公開後に設定 –> <!– 内部リンク候補:記事035「企業型DC加入者が確認したいこと」公開後に設定 –>
5つの数字を使って不足額を計算する
ここでは、計算方法が分かるように、架空の夫婦を例にします。
実在する家庭の数字ではありません。
仮の条件
| 確認項目 | 仮の金額・期間 |
| 老後の月額生活費 | 26万円 |
| 60~65歳の月額収入 | 20万円 |
| 65歳以降の年金月額 | 22万円 |
| 計算する年齢 | 60~90歳 |
| まとまった支出 | 500万円 |
| 老後に使える資産 | 1,600万円 |
60歳から65歳までの不足額
月額生活費26万円から、再雇用後の収入20万円を引きます。
26万円-20万円=毎月6万円の不足
これが5年間続くと仮定します。
6万円×12か月×5年=360万円
60歳から65歳までの生活費不足額は360万円です。
65歳から90歳までの不足額
月額生活費26万円から、年金月額22万円を引きます。
26万円-22万円=毎月4万円の不足
これが25年間続くと仮定します。
4万円×12か月×25年=1,200万円
65歳から90歳までの生活費不足額は1,200万円です。
まとまった支出と資産を反映する
2つの期間の生活費不足額に、まとまった支出を加えます。
360万円+1,200万円+500万円=2,060万円
ここから老後に使える資産1,600万円を差し引きます。
2,060万円-1,600万円=460万円
この仮の条件では、老後資金の不足額は460万円です。

この460万円は、将来確定する金額ではありません。
生活費、収入、期間、まとまった支出のどれかが変われば、結果も変わります。大切なのは、結果だけでなく、計算に使った前提を残すことです。
計算結果が大きくても、すぐ投資額を決めない
不足額が大きく出ても、その金額をすべて貯蓄や投資で用意すると決める必要はありません。
まず、計算に使った数字を一つずつ確認します。
- 老後の生活費に現在の教育費が残っていないか
- 住宅ローン完済後も同じ生活費で計算していないか
- 再雇用後の収入を入れ忘れていないか
- 配偶者の年金を入れているか
- 退職金を確認しているか
- 同じ臨時支出を二重に計上していないか
- 教育費などに使う資産を老後資金へ重複計上していないか
そのうえで、不足額を小さくする方法を検討します。
- 現在の家計を整える
- 定年後の働き方を確認する
- 年金の受給開始時期を検討する
- 教育費終了後の積立額を決める
- 住宅ローンの返済計画を確認する
- 預貯金と運用資産の役割を分ける
一つの方法だけで解決しようとせず、自分の家計で無理なく続けられる方法を組み合わせます。
不足額は年に一度更新する
老後資金の不足額は、一度計算したら終わりではありません。
次のような変化があったときに更新します。
- ねんきん定期便が届いた
- 再雇用後の条件が分かった
- 退職金の見込額が分かった
- 教育費が終わった
- 住宅ローン残高が減った
- 生活費を見直した
- 預貯金や運用資産の残高が変わった
少なくとも年に一度、同じ計算表を更新すると、準備がどこまで進んだかを確認できます。
金融庁のライフプランシミュレーターも、入力した収入や支出に基づく結果は目安であり、将来を保証するものではないと説明しています。計算結果を固定された答えではなく、今後の行動を決めるための資料として使います。
FAQ 老後資金の不足額に関するよくある質問
- Q老後資金の不足額は平均額で計算してもよいですか?
- A
最初の仮置きとして平均額を見ることはできますが、最終的には自分の生活費を使います。
住居費、住宅ローン、車、家族構成などによって必要額が変わるためです。
- Q年金は額面と手取りのどちらを使いますか?
- A
最初の概算では、ねんきん定期便などに記載された額面を使えます。ただし、実際の年金からは税金や社会保険料が差し引かれる場合があります。
公開前の詳細な計画では、手取りとの差も考慮します。
- Q退職金が分からなくても計算できますか?
- A
計算できます。
退職金を「未確認」とした状態で、退職金を含めない不足額を出します。その結果を確定額として扱わず、人事へ確認する項目として残します。
- Q何歳まで計算すればよいですか?
- A
全員共通の年齢はありません。
まず90歳まで計算し、95歳まで生活した場合も確認すると、期間による差が分かります。
- Q夫婦の場合はどのように計算しますか?
- A
生活費は世帯全体で確認し、収入は本人分と配偶者分を分けて書きます。
夫婦の年齢が異なる場合は、年金の受給開始時期がずれるため、期間を分けて計算します。
- Q計算結果がマイナスになった場合はどうしますか?
- A
計算上は、必要額より老後に使える資産が多い状態です。
ただし、資産の使途、値動き、受取時期、医療・介護や住宅修繕などの未計上支出がないかを確認します。余裕があるという結果も将来を保証するものではありません。
まとめ|最初に5つの数字を一枚に書く
老後資金の不足額は、全員一律の金額ではありません。
次の5つの数字を使って、自分の家計から計算します。
- 老後の月額生活費
- 老後の月額収入
- 不足が続く期間
- まとまった支出
- 老後に使える資産
最初からすべてを正確に埋める必要はありません。
今日することは、現在の月額生活費と年金見込額を一枚の紙に書くことです。分からない項目には「未確認」と書き、確認する資料や問い合わせ先を決めましょう。
不足額が分かることは、不安を増やすためではありません。
これから確認することと、今日できる行動を見つけるための作業です。
参考にした一次情報
確認日:2026年7月23日









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