定年後も同じ会社で働く予定でも、再雇用後の給料が定年前より下がる可能性があります。給料が何割になるのか、今の生活を続けられるのか、不安を感じる50代会社員もいるでしょう。
ただし、「定年前の何割になるか」だけでは生活できるか判断できません。額面が分かっても、税金や社会保険料を引いた手取り、条件を満たす場合の給付、配偶者の収入、世帯の生活費が分からないからです。
さらに、定年前の所得に基づく住民税が残る期間、その後、65歳到達時では、家計に入るお金や差し引かれるお金が変わります。
この記事では、勤務先から提示される再雇用条件を起点に、本人の手取りと世帯収支を確認する方法を整理します。読み終えると、毎月世帯へ入る金額、期間ごとの収支、65歳までに別途準備する可能性がある金額を確認できます。
再雇用後の生活は「定年前の何割か」だけで判断しない
再雇用後の生活は、平均的な給与低下率ではなく、自分の勤務先の提示条件と世帯収支で判断します。
最初に用意するのは、労働条件通知書や再雇用条件の提示資料です。そこから、額面給与、税金・社会保険料などを引いた本人の手取り、対象となる給付、配偶者を含む世帯収入、生活費などの世帯支出の順で確認します。
給与の平均値は、変化に備えるきっかけにはなります。しかし、会社、仕事、勤務時間などが違う人の平均を、自分の給与見込額にはできません。
家計は「再雇用直後」「住民税が再雇用後の所得を反映してから64歳まで」「65歳到達時」の3期間に分けます。住民税、高年齢雇用継続給付、年金、雇用条件が同じタイミングで変わるとは限らないためです。
再雇用後の給料はどこまで下がるのか
パーソル総合研究所の「シニア従業員とその同僚の就労意識に関する定量調査」では、定年後再雇用者の年収は、定年前より平均44.3%低下していました。調査は2021年1月6日から12日に実施されたものです。
これは調査対象となった再雇用者の平均であり、現在のすべての会社員を表す数字ではありません。本人の再雇用後の年収が44.3%下がるという意味でもありません。調査対象などの詳細は、パーソル総合研究所の調査で確認できます。
勤務先と働き方で給料は変わる
再雇用後の給料は、仕事内容と責任、勤務日数と勤務時間、フルタイムか短時間勤務か、契約期間、役職などで変わります。同じ会社に残っても定年前と同じ条件が続くとは限りません。反対に、「再雇用だから必ず半分になる」とも決められません。
面談では月給だけでなく、働く時間、担当業務、契約期間まで確認します。年収と仕事の負担を一緒に比べるためです。
基本給・手当・賞与を分けて確認する
提示された給料は内訳を分けます。定年前の役職手当、住宅手当、家族手当などが再雇用後も続くとは限りません。
| 項目 | 定年前 | 再雇用後 | 差額・確認事項 |
|---|---|---|---|
| 基本給 | |||
| 役職・住宅・家族等の手当 | |||
| 通勤手当 | 生活費と分ける | ||
| 残業代 | |||
| 賞与(年額) | |||
| 年収見込額 |
賞与は有無だけでなく、年額見込額、算定期間、支給条件も確認します。未確定の賞与や残業代は、家計の確定収入に入れません。
通勤手当は実際の通勤費と対応させる
通勤手当は、家計で自由に使える収入として単純に加えず、実際の通勤費と対応させて確認します。通勤するための交通費と対応する収入だからです。
家計表では、通勤手当と通勤に伴う支出を対応させます。在宅勤務や勤務日数の変更で交通費が変わる場合も、支給方法と実際の負担を確認します。
再雇用後に家計で使えるお金を確認する
額面給与が分かったら、本人が家計へ入れられる月額を確認します。手取りは、額面から所得税、住民税、社会保険料、会社独自の控除などを差し引いた金額です。
税金と社会保険料を引いた手取りを見る
再雇用後も加入条件を満たせば、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などが給与から差し引かれます。正確な控除額は、給料、加入制度、扶養状況、居住地などで変わります。
人事・給与担当には、社会保険の加入、標準報酬月額、住民税の徴収方法、会社独自の控除、再雇用後の手取り試算を出せるか確認します。
60歳以上の人が退職後、継続して再雇用される場合、事業主が資格喪失届と資格取得届を同時に提出することで、再雇用された月から再雇用後の給与に応じた標準報酬月額に決定できる仕組みがあります。本人は勤務先へ手続きの扱いを確認します。詳細は日本年金機構の継続再雇用時の案内で確認できます。
本人の再雇用後の額面月収-税金-社会保険料-その他控除+対象となる給付=本人が家計へ入れられる月額
給付は、受給条件、支給額、入金時期を確認できた場合だけ加えます。給与と同じ日に毎月入金される前提にはしません。
定年前の所得に基づく住民税が残る期間を確認する
個人住民税の所得割は、前年の所得金額に応じて計算されます。そのため、再雇用後に給料が下がっても、定年前の所得に基づく住民税がしばらく差し引かれる場合があります。
ただし、再雇用開始からちょうど1年後に税額が変わるわけではありません。給与所得者の住民税は通常6月から翌年5月まで特別徴収されるため、再雇用の開始月によって影響が残る期間は変わります。
実際の税額と切替時期は、給与明細、住民税決定通知書、居住する自治体の案内で確認します。制度の一般的な仕組みは、東京都主税局「個人住民税」でも確認できます。
高年齢雇用継続給付の対象になるか確認する
高年齢雇用継続給付は、給料が下がった人全員が受け取れる制度ではありません。主な条件は、60歳以上65歳未満、雇用保険の被保険者であった期間が原則5年以上、60歳到達時などと比べて賃金が75%未満に低下していることなどです。
2025年4月1日以降に60歳へ到達した人などは、支給率の上限が各月に支払われた賃金の10%です。賃金が75%未満になれば一律10%ではありません。実額は低下率、支給限度額、最低限度額などで変わります。厚生労働省の支給率変更案内と高年齢雇用継続給付Q&Aで確認します。
申請は原則として事業主経由です。支給申請は原則2か月に一度で、給与と同じ日に毎月入るとは限りません。勤務先へ申請担当、対象月、申請月を確認します。手続きはハローワークインターネットサービスで確認できます。
60歳から年金を受け取る前提にしない
老齢基礎年金と老齢厚生年金は原則65歳からです。60歳から64歳までの世帯収入へ、本人の年金を自動的に入れません。受給開始時期は日本年金機構の案内で確認できます。
繰上げ受給はできますが、請求時期に応じて年金が減り、その減額率は生涯変わりません。請求後は取り消せません。生活費不足だけで先に決めず、世帯収支を整理して年金事務所などへ相談します。注意点は日本年金機構「年金の繰上げ受給」で確認できます。
60歳から65歳までの家計を3つの期間に分ける
世帯家計は、本人の給料だけでなく、配偶者の給料や年金、給付、生活費を同じ表で確認します。

表を埋める前に、毎月の生活費へ何を含めるか決めます。生活費に住宅ローンや年払い支出が入っているなら、別の行へ重ねて記入しません。
| 項目 | 再雇用直後・定年前所得に基づく住民税が残る期間 | 住民税が再雇用後所得を反映してから64歳まで | 65歳到達時 |
|---|---|---|---|
| 本人の給料手取り | |||
| 配偶者の給料・年金 | |||
| 高年齢雇用継続給付の月額換算 | 終了を確認 | ||
| その他の定期収入 | |||
| 世帯の収入合計 | |||
| 毎月の生活費 | |||
| 住宅ローン等 | |||
| 年払い支出の月割額 | |||
| 仕事を続けるための支出 | |||
| 世帯の支出合計 | |||
| 毎月の収支 |
- 世帯の収入合計=本人の手取り+配偶者の給料・年金+給付の月額換算+その他の定期収入
- 世帯の支出合計=毎月の生活費+住宅ローン等+年払い支出の月割額+仕事を続けるための支出
- 毎月の収支=世帯の収入合計-世帯の支出合計
給付の月額換算は、実際の入金日とは分けて管理します。収支を見るための換算額と、口座残高を確認する資金繰りは別だからです。
再雇用直後|定年前の所得に基づく住民税が残る期間
この期間は、再雇用後の手取りと、定年前所得の影響が残る住民税を確認します。住民税決定通知書の月額を使い、いつまで同じ税額が差し引かれるか確認します。
高年齢雇用継続給付を見込む場合も、受給資格の確認前や入金前に使えるお金として扱いません。
住民税が再雇用後の所得を反映してから64歳まで
住民税へ再雇用後の所得が反映されたら、新しい給与明細と住民税決定通知書で家計表を更新します。
契約更新時に勤務日数や給与が変われば、その時点から手取りと支出を再計算します。配偶者の働き方や年金開始などが変わった場合も同様です。
65歳到達時|給付終了・年金開始・雇用継続を確認
65歳到達時は、高年齢雇用継続給付の終了、本人と配偶者の年金開始時期、再雇用の終了または継続、継続時の給与と社会保険など、変わる項目だけを確認します。
65歳以降の長期家計はここでは試算しません。60歳から64歳までの数字も延長せず、年金と雇用条件が確認できた時点で次の家計表を作ります。
毎月赤字になる場合の確認順序
毎月の収支が赤字でも、最初から退職金で全期間を補うとは決めません。支出、選択できる勤務条件、期間別の不足額の順で確認します。
続く支出と終わる支出を分ける
支出を、食費や住宅ローンなどの「続く支出」、完済予定が分かるローンや期限のある教育費などの「終わる支出」、通勤費や社会保険料などの「時期で変わる支出」に分けます。
年払いの保険料、固定資産税、車検費用などは年額を12で割ります。ただし、すでに毎月の生活費に含めた支出は再計上しません。
選択できる勤務条件があるか会社へ確認する
勤務日数、勤務時間、仕事内容、賞与、契約更新条件について、選択できる条件があるか会社へ確認します。
これは希望すれば自由に変更できるという意味ではありません。会社の制度と提示可能な選択肢を確認し、収入、体力、通勤負担を比較するためです。交渉すれば給料が上がると決めつけず、提示された範囲で判断します。
退職金から補う金額は別枠で試算する
支出と勤務条件を確認しても不足する場合は、退職金などから補う予定額を生活費と別枠で試算します。
5年間を同じ月間不足額で計算しません。住民税の切替前後で不足額が違い、契約更新でも収入が変わる可能性があるためです。
月間不足額=世帯の支出合計-世帯の収入合計(支出が収入を上回る場合)
65歳までの不足予定総額=再雇用直後の月間不足額×該当月数+住民税切替後の月間不足額×65歳到達前までの該当月数+期間中のまとまった支出
該当月数は、再雇用開始日、住民税決定通知書、65歳到達日を基に確認します。契約更新、給与、家族構成、住宅ローンなどの条件が変わった時点で再計算します。
再雇用の面談で確認したい項目
再雇用の面談では、月給だけでなく、家計へ影響する条件を目的とセットで確認します。

| 確認項目 | 確認する内容 | 確認する目的 |
|---|---|---|
| 契約期間・更新基準 | 終了日、更新時期と基準 | 収入が続く期間を把握する |
| 基本給・各種手当 | 月額、対象条件、終了する手当 | 額面月収の内訳を出す |
| 賞与・昇給・評価 | 年額見込、算定期間、支給条件 | 年収見込と変動幅を確認する |
| 勤務日数・勤務時間 | 選択可能な勤務条件 | 給与と生活時間を比較する |
| 残業の扱い | 有無、申請方法、割増賃金 | 残業代を固定収入にしない |
| 仕事内容・責任 | 担当業務、役割、責任範囲 | 給与条件と負担を照合する |
| 勤務地・通勤 | 配属先、異動、通勤手当 | 通勤手当と支出を分ける |
| 社会保険・雇用保険 | 加入、資格手続き、標準報酬月額 | 手取りと給付条件を確認する |
| 給付の申請担当・時期 | 担当部署、初回・以後の申請 | 給付を入金前に使わない |
| 有給休暇 | 継続、付与日数、取得方法 | 休暇条件を把握する |
| 退職金の追加支給 | 再雇用期間が対象になるか | 将来の受取額を推測しない |
| 65歳以降の雇用制度 | 継続の有無、提示時期 | 65歳到達時の変化に備える |
回答は口頭だけで終わらせず、労働条件通知書や会社の規程でも確認します。未確定の項目は家計表へ確定額として入れません。
FAQ 再雇用後の給料に関するよくある質問
- Q再雇用後の給料は定年前の何割ですか?
- A
一律の割合はありません。2021年調査の平均44.3%低下は参考値です。自分の見込額には、勤務先が示す基本給、手当、賞与、勤務時間などを使います。
- Q再雇用後も社会保険料は引かれますか?
- A
加入条件を満たす場合は、再雇用後も社会保険料が差し引かれます。正確な額は給与と加入条件で変わるため、勤務先へ加入と標準報酬月額を確認します。
- Q高年齢雇用継続給付はいくら受け取れますか?
- A
賃金が75%未満になっただけでは確定しません。年齢、被保険者期間、低下率、限度額などで変わります。勤務先またはハローワークで資格と手続きを確認します。
- Q再雇用直後の住民税はなぜ負担が重く感じられますか?
- A
前年所得を基に計算されるため、給料が下がっても定年前所得に基づく税額が残る場合があるからです。開始から1年で一律に切り替わるわけではありません。住民税決定通知書で確認します。
- Q60歳から年金を受け取って不足を補ってもよいですか?
- A
老齢年金は原則65歳からです。繰上げは年金額が生涯減り、請求後は取り消せません。生活費不足だけで決めず、世帯収支を整理して年金事務所などへ相談します。
まとめ|再雇用後の給料は手取りと家計を期間別に確認する
再雇用後の給料で生活できるかは、平均的な低下率ではなく、自分の提示条件と世帯収支で判断します。
最初に確認する資料は、勤務先から提示される再雇用条件です。額面、手取り、給付、配偶者を含む世帯収入、世帯支出の順に数字をそろえます。
定年前所得に基づく住民税が残る期間と、その後を分けます。65歳到達時は、給付終了、年金開始、雇用継続など変わる項目を改めて確認します。
本記事は2026年7月19日時点で確認できる情報をもとに作成しています。制度や限度額は変更される可能性があります。個別の条件は、勤務先、ハローワーク、年金事務所、居住する自治体などへ確認してください。



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