大学の納付案内と、ねんきん定期便。同じテーブルに二つを置くと、子どものために今支払うお金と、自分たちが老後に受け取るお金が同時に目に入ります。
私は50代の会社員で、4人の子どものうち2人は巣立ち、同居する2人は大学生です。住宅ローンも返済中です。
「大学の教育費と老後資金は、どちらを優先すればよいのだろう」
この記事では、卒業までの残額、親が負担できる上限、利用できる支援、教育費の終了時期、終了後の振り替え額の5つに分けて確認します。
結論|直近の教育費を確保しながら老後資金を使い切らない
最初に確保するのは、納付期限が近い教育費です。ただし、普通預金を取り崩し、将来受け取る退職金まで当てにしていると、親の生活を守るお金との境目がなくなります。
そこで、次の5項目を確認します。
- 大学卒業までの教育費残額
- 親が負担できる上限
- 利用できる授業料減免や奨学金
- 教育費が終了する時期
- 教育費終了後に老後資金へ回せる金額
教育費と老後資金は二者択一ではない
教育費には納付期限があり、老後の生活費は退職後も続きます。親が教育費を全額負担できなくても、子どもの進学を応援していないことにはなりません。老後資金を残すことも、将来子どもへ負担をかけにくくする準備です。
老後資金の全体像をまだ整理していない場合は、必要額を一律の平均で決めず、生活費や年金見込額から考える手順も確認できます。


1.大学卒業までに必要な教育費の残額を確認する
最初に、大学から届く納付案内、学則、学生便覧、口座の引き落とし履歴を集め、今から卒業までに自分の家庭が支払う残額を出します。
大学へ支払う金額を確認する
授業料、施設設備費、実験実習料などを、納付時期と一緒に書き出します。入学金は通常、入学時だけの支払いなので、在学中の残額へ重ねて入れないようにします。学部や履修内容で異なる費用は、大学の最新案内を優先します。
文部科学省によると、令和7年度の私立大学(学部)の初年度学生納付金等の平均は150万7,647円です。これは授業料、入学料、施設設備費、実験実習料などを含む初年度の平均であり、4年間の総額ではありません。単純に4倍せず、在籍する大学の年度ごとの納付額を確認します。
出典:文部科学省「私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
学費以外に親が負担している金額を確認する
通学費、教材費、資格試験代、住居費、食費、通信費などから、親が実際に負担しているものだけを拾います。
JASSOの令和6年度学生生活調査でいう「学生生活費」は、授業料などの学費だけではありません。食費、住居・光熱費、娯楽・し好費、通信費を含む生活費との合計です。その調査額を、そのまま親の負担額として使うことはできません。
教育費残額を計算する
集めた数字を、次の式へ入れます。
卒業までの教育費残額
=卒業までに大学へ支払う金額
+卒業までに親が負担する生活関連費
これから準備する不足額
=卒業までの教育費残額
-教育費として確保済みのお金
-確定している給付・減免額
「申請する予定」「利用できるかもしれない」という金額は、確定するまで引きません。確定前の支援を差し引くと、納付直前に不足が戻ってくるためです。

2.親が負担する範囲と上限を決める
残額が見えたら、「親の生活を崩さずにいくらまで出せるか」を確認します。
教育費に使わないお金を分ける
毎月の生活費、税金、住宅ローン、近いうちに予定している住宅修繕や医療費など、教育費以外に必要なお金を先に分けます。退職金も、受給時期や手取り額が確定していない段階で、授業料の原資として全額を数えません。
老後資金として残す額に共通の割合はありません。年金見込額、退職時期、住宅ローン、生活費によって変わります。
親子で確認する項目を整理する
確認するのは、誰かの責任ではなく、支払いの分担です。大学へ支払う費用、親が負担する生活費、本人が負担する費用、支援制度を利用した場合の手続きと返還者を一枚にまとめます。
「親はここまで負担できる。残りはいくらで、どの方法を確認するか」まで数字にすると、次の行動を選べます。
3.借入れを決める前に授業料減免や奨学金を確認する
不足額が出てもすぐに借入額を決めず、給付や減免から確認します。
大学独自の支援制度を確認する
大学によって、授業料減免、給付型奨学金、家計急変時の支援、分納・延納などの制度があります。対象条件、申請時期、必要書類、ほかの制度との併用可否は、学生課や奨学金窓口で確認します。
多子世帯の授業料等減免を確認する
令和7年度から、多子世帯に属する学生等は所得制限なく授業料等減免を受けられるようになりました。所得制限はありませんが、扶養状況、資産、対象校、学業などに関する要件があります。ただし、「子どもが3人いれば大学が無料」という制度ではありません。
JASSOでは、子どもの総人数ではなく、判定時点で生計維持者の扶養親族に当たる「子ども」の数などを使って多子世帯を判定します。学生本人が生計維持者に扶養されていることも条件です。大学の授業料等減免には上限があり、私立大学は入学金26万円、授業料年70万円が上限として示されています。実際の対象判定と減免額は、JASSOと在籍大学で確認します。
奨学金と教育ローンの違いを確認する
貸与型奨学金と教育ローンは、主に借りる人と返す人が異なります。
| 比較項目 | 貸与型奨学金 | 国の教育ローン |
|---|---|---|
| 主に借りる人 | 学生本人 | 主に保護者 |
| 主に返す人 | 学生本人 | 借りた保護者 |
| 主な確認点 | 貸与月額、利子の有無、卒業後の返還額と期間 | 金利、借入額、返済額と期間、世帯年収等の条件 |
| 相談先 | 在籍大学の奨学金窓口、JASSO | 日本政策金融公庫、教育ローンコールセンター |
JASSOは、貸与型奨学金を借りるのも卒業後に返還するのも学生本人と案内しています。本人が契約内容を理解し、借り過ぎないようにします。
出典:日本学生支援機構「奨学金を借りるのは学生本人ですか、親ですか」
日本政策金融公庫の国の教育ローンは、2026年7月時点で固定金利年4.05%です。金利や利用条件は変わる可能性があるため、申込を決める前に最新情報と返済総額を確認します。
4.教育費の終了時期と定年後の収入を年表にする
残額だけでは、家計が苦しい期間の長さは分かりません。卒業、定年、再雇用、年金受給開始などを同じ年表へ置くと、教育費と収入減が重なる期間が見えてきます。
年表に入れる項目
年表には、子どもごとの卒業予定年月、授業料の納付月、親の定年年月、再雇用を選ぶ場合の期間、住宅ローンの完済予定年月、年金の受給開始予定を入れます。再雇用後の収入が未確定なら、推測額ではなく「勤務先へ確認」と記します。
教育費が重なる期間を確認する
同居する大学生が2人いても、教育費の終了時期が同じとは限りません。年度ごとに、大学へ払う額と生活費として親が負担する額を分けます。
「次の納付まで」「卒業まで」「定年後」に区切り、どの期間に不足が出るかを見ます。
不足額が見えたときの確認順
不足が見えたら、次の順番で確認します。
- 給付・減免制度
- 大学の分納・延納
- 親が負担する範囲
- 家計の固定費
- 奨学金と教育ローン
借入れを最後に置くのは、返還や返済が卒業後・退職後まで続く可能性があるためです。
5.教育費が終わったら老後資金へ振り替える
教育費の終わりは、家計に余裕が戻るのを待つ日ではなく、配分を切り替える日です。卒業予定年月の翌月など、振り替えを始める時期を年表に書きます。
単純な振り替え額を計算する
教育費が終わっても、子どもに関する支出がすべて同時にゼロになるとは限りません。残る支出を引いて計算します。
教育費終了後に振り替えられる金額
=これまで教育費に使っていた月額
-教育費終了後も残る子ども関連費
たとえば、月5万円を5年間振り替えると、5万円×12か月×5年=元本300万円です。これは一般的な単純計算例で、筆者の実例ではありません。運用益も含めていません。
振り替え額を決めたら、老後資金用の口座へ移す日を設定します。
教育費と老後資金についてよくある質問
教育費と老後資金は結局どちらを優先しますか?
支払期限が近い教育費を先に確保します。ただし、生活費や老後に残すお金まで使い切らず、卒業までの残額と親の負担上限を決めます。どちらか一方だけを選ぶのではありません。
退職金を大学の授業料に使ってもよいですか?
一律には決められません。退職金の受給時期、手取り額、退職後の生活費、住宅ローン、年金見込額を確認し、教育費へ使っても残せる金額を出してから判断します。全額を授業料へ回す前提にはしません。
奨学金は親が返したほうがよいですか?
貸与型奨学金の借り手と返還者は学生本人です。親が支援するかは家庭ごとの判断ですが、借入時点では本人が返還額と期間を理解し、無理のない貸与月額を選ぶことが先です。
子どもが3人以上いれば大学の授業料は無料になりますか?
いいえ。多子世帯の判定には扶養状況などの条件があり、授業料等減免には学校種別ごとの上限があります。対象判定、減免額、申請方法をJASSOと在籍大学で確認します。
まとめ|卒業までの残額と親が負担できる範囲を確認しよう
大学生の教育費と老後資金は、どちらか一方だけを守る問題ではありません。直近の教育費を確保しながら、親の生活と老後のために使わないお金を分けます。
卒業までの教育費残額、そこから確保済み資金と確定済み支援を引いた不足額、親の負担上限、教育費の終了時期、終了後の振り替え額を同じ紙に置きます。
まずは大学の納付案内を集め、卒業までの教育費残額を書き出してください。次に、確保済み資金と確定した給付・減免額を引き、これから準備する不足額を確かめます。



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