老後資金の不足額を計算する方法|50代夫婦が年金と生活費から確認

老後資金を準備する

ねんきん定期便を見ながら、夫婦の年金見込額を電卓で合計する。月額に直すと、受け取れる金額は分かりました。

そこで新しい疑問が出ます。

「この年金額で、老後の生活費は足りるのだろうか」

老後資金の不足額は、年金と生活費の差を計算し、老後の年数を掛け、退職金や老後に使える預貯金を差し引くと見えてきます。この記事では58歳の会社員夫婦を例に、ノート1ページで整理できる順番を説明します。

老後資金は平均額ではなく自分の不足額から考える

老後資金は「一律に2,000万円必要」と決められるものではありません。受け取る年金、退職する年齢、生活費、住まい、保有資産が世帯ごとに違うからです。

総務省の家計調査には高齢夫婦無職世帯の収入・支出が掲載されています。ただし、統計の平均は自分の必要額そのものではありません。生活費の見当を付ける参考にして、最後は自分の家計に置き換えます。

老後資金の全体的な考え方を先に整理したい場合は、「老後資金はいくら必要?50代夫婦が最初に知っておきたい考え方」も確認してください。

老後資金の不足額を計算するために用意する5つの数字

計算前に、次の数字を夫婦分そろえます。

確認する数字主な確認先計算時の注意
年金見込額ねんきん定期便・ねんきんネット夫婦それぞれの受給開始年齢も確認
老後の毎月の生活費現在の家計明細老後に減る支出と残る支出を分ける
年金受給前の不足額退職後の収入・家計見込み生活費から再雇用給与などを差し引く
老後に使える預貯金銀行・証券口座生活防衛資金を分ける
退職金の見込額会社の規程・試算税引後の手取りや使い道を確認

1.夫婦の年金見込額

50歳以上のねんきん定期便には、原則として現在の加入条件が60歳まで続くと仮定した老齢年金の見込額が表示されます。夫婦それぞれの年額を合計し、12で割って月額に直します。

働き方や受給開始年齢を変えたい場合は、ねんきんネットで条件を変えて試算できます。見込額は将来の受取額を保証する数字ではないため、毎年更新して確認します。

年金見込額の読み方や年額から月額へ直す手順は、「50歳以上のねんきん定期便の見方|毎月いくらもらえるか計算」で整理しています。

2.老後の毎月の生活費

現在の支出をそのまま使うのではなく、老後に減る費用と残る費用に分けます。

通勤費、仕事用の衣服、現役中だけの積立は減る可能性があります。一方で、食費、水道光熱費、通信費、保険料、住居費、車の維持費は残ります。旅行や趣味に使いたい金額も入れてください。

家計の数字が分からない場合でも、最初から細かな家計簿を作る必要はありません。「お金が残らない7つの原因|50代の家庭で最初に確認したい支出」を参考に、カード明細と固定費から確認すると進めやすくなります。

現在の生活費から老後に残る支出を分けて試算する方法は、今後作成する「老後の生活費シミュレーション」で詳しく扱います。

3.年金を受け取るまでの不足額

60歳で退職し、65歳から年金を受け取る場合でも、5年分の生活費をそのまま用意するとは限りません。再雇用の給与、企業年金、配偶者の収入などがある場合は、それらを生活費から差し引きます。

計算式は次のとおりです。

(年金受給前の毎月の生活費 − 毎月の収入)× 12か月 × 空白年数

4.現在の預貯金

預貯金のすべてを老後資金に入れるとは限りません。病気、失業、家電の故障などに備える生活防衛資金や、数年以内に使う予定のお金は分けておきます。

5.退職金の見込額

退職金は会社の規程や試算で確認します。住宅ローンの完済、車の購入、子どもの支援などに使う予定があれば、その分は老後の生活費に充てられません。見込額の全額をそのまま差し引かないようにします。

老後資金の不足額を3ステップで計算する

複雑に見える計算も、3段階に分ければ整理できます。

ステップ1.毎月の生活費から年金月額を引く

毎月の生活費 − 夫婦の年金見込月額 = 毎月の不足額

不足額がマイナスになれば、設定した範囲では年金が生活費を上回ります。ただし、特別支出は別に確認します。

ステップ2.毎月の不足額に老後年数を掛ける

毎月の不足額 × 12か月 × 想定する老後年数 = 年金受給後の不足総額

何歳まで計算するか迷う場合は、90歳、95歳、100歳までのように複数の期間で出します。

寿命は一人ひとり異なり、夫婦のどちらかが長生きする可能性もあります。平均的な数字を一つの終了年齢にするのではなく、長生きした場合にも生活費が続くかを確認します。

ステップ3.預貯金と退職金を差し引く

年金受給後の不足総額 + 年金受給前の不足額 + 特別支出 − 老後に使える預貯金 − 老後に使える退職金 = 今後準備したい金額

計算結果がプラスになれば、その金額が現在の条件で今後準備したい額です。マイナスになれば、計算上は老後に使える預貯金と退職金が支出見込額を上回っています。

ただし、物価の変化、税金・社会保険料、医療費や介護費などによって結果は変わります。マイナスになった場合も「老後資金は十分」と決めつけず、条件を変えて確認します。

58歳会社員夫婦の老後資金を実際に計算してみる

ここでは、前の記事からつながる架空の58歳夫婦を例にします。計算の流れを示すための例であり、必要額を示すものではありません。

毎月の年金見込額を確認する

項目月額
夫の年金見込額176,729円
妻の年金見込額60,000円
夫婦の合計236,729円

老後の生活費を仮定する

現在の家計から、通勤費や現役中だけの支出を除き、老後も残る費用を積み上げた結果、毎月280,000円と仮定します。

毎月の不足額を計算する

280,000円 − 236,729円 = 43,271円

この夫婦は、年金受給後に毎月43,271円不足する計算です。

90歳までの不足総額を計算する

65歳から90歳までの25年間で計算します。

43,271円 × 12か月 × 25年 = 12,981,300円

約1,298万円です。95歳までの30年間なら15,577,560円、100歳までの35年間なら18,173,820円になります。

計算期間不足総額
65〜90歳(25年)12,981,300円
65〜95歳(30年)15,577,560円
65〜100歳(35年)18,173,820円

預貯金と退職金を差し引く

例として、老後に使える預貯金が700万円、老後に使える退職金が800万円あるとします。年金を受け取るまでの生活費から、再雇用中の給与などを差し引いた不足額を500万円、特別支出を400万円と仮定すると、90歳までの計算は次のとおりです。

1,298万1,300円 + 500万円 + 400万円 − 700万円 − 800万円 = 698万1,300円

現時点の条件では、約698万円を今後準備する、または支出・働き方を調整する必要があると分かります。預貯金、退職金、空白期間、特別支出が変われば結果も変わります。

計算に入れ忘れやすい老後の特別支出

毎月の生活費だけでは、まとまった支出を拾えません。発生時期と概算額を別表にして、合計を計算式へ加えます。

住まいの修繕費と固定資産税

持ち家でも住居費がゼロになるわけではありません。外壁や屋根、給湯器、水回りの修繕、固定資産税、マンションの管理費・修繕積立金が続きます。

車の買い替えと維持費

車検、自動車税、保険、修理に加え、買い替えの回数と予算を決めます。運転をやめる予定の年齢も計算に影響します。

医療費と介護費

医療費や介護費には個人差があり、一定額とは決められません。現在の健康状態、保険、公的制度を確認し、余裕資金を別に持ちます。

家電の買い替えや冠婚葬祭費

冷蔵庫、エアコン、給湯器などは同じ時期に買い替えが重なる場合があります。子どもや孫への援助、冠婚葬祭、帰省費も希望に合わせて入れます。

不足額が大きくても一度に用意する必要はない

不足額は、今すぐ同額の現金を用意するという意味ではありません。計算条件を一つずつ見直します。

  • 働く期間を延ばし、年金受給前の空白を短くする
  • 受給開始時期を変えた場合の年金見込額を試算する
  • 通信費、保険料、車、住居費など老後の固定費を見直す
  • 住宅ローンの返済計画を確認する
  • 退職金を使う目的と上限を決める
  • 定年までの毎月の積立額を決める

不足額が大きいときほど、特定の金融商品を急いで選ぶ前に家計と年金の数字を確かめます。

住宅ローンが残っている場合は、残高と完済年齢を老後資金の計算に含めます。

老後資金を計算した後に確認すること

不足額が出たら、次の順番で数字を点検します。

  1. 生活費に入れた支出は、直近の明細に合っているか
  2. 年金見込額の基準時点と受給開始年齢は正しいか
  3. 退職金の見込額と手取りを会社で確認できているか
  4. 住宅ローンや教育費など、老後まで残る支出はあるか
  5. 定年まで毎月いくら準備できるか
  6. 90歳・95歳・100歳の複数パターンを比べたか

年に1回、ねんきん定期便が届く時期に更新すると、変化を追いやすくなります。

FAQ よくある質問

Q
老後資金は何歳まで計算すればよいですか?
A

一つの年齢に決めず、90歳、95歳、100歳のように複数の期間で計算します。夫婦は年齢や性別が異なるため、どちらかが長生きする場合と一人になった後の生活費も分けて考えます。

Q
退職金は老後資金に含めてよいですか?
A

含められますが、全額を生活費に使えるとは限りません。住宅ローンの返済、車の購入、住まいの修繕など、使い道が決まっている分を除いた金額で計算します。

Q
住宅ローンが残っている場合はどう計算しますか?
A

毎月返済額を生活費に含め、完済までの年数を反映します。退職金で完済する予定なら、退職金から返済額を引き、残りだけを老後に使える資金とします。

Q
夫婦のどちらかが先に亡くなった場合も計算すべきですか?
A

計算しておくと安心です。年金額は単純に一人分だけ残るとは限らず、遺族年金の要件も関係します。一人暮らしになっても住居費や光熱費が半分になるとは限らないため、収入と支出を別に試算します。

Q
不足額が大きい場合は投資を始めるべきですか?
A

不足額だけを理由に急いで投資を始める必要はありません。生活費、年金、退職金、働く期間を点検し、毎月準備できる額を確認します。投資には元本割れの可能性があるため、目的、期間、リスク許容度を別に検討します。

まとめ|老後資金は不足額を出すと次にやることが見える

老後資金の不足額は、次の3ステップで計算できます。

  1. 毎月の生活費から夫婦の年金見込月額を引く
  2. 毎月の不足額に12か月と想定する老後年数を掛ける
  3. 年金受給前の不足額と特別支出を加え、老後に使える預貯金と退職金を差し引く

一度で正解を出そうとせず、90歳、95歳、100歳までのように条件を変えて比べます。数字が見えれば、働く期間、年金の受給開始時期、老後の固定費、定年までの積立額のうち、どこから見直すかを決めやすくなります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました